催眠演舞 発売記念SS 香具耶編 前編

好評発売中の「催眠演舞」。
発売日の9月27日に公開が出来なかった、発売記念SS香具耶編前編を公開いたします!


「いいわね」
「いけるね」
「いけるわね」
「これでいこうか」
「ええ」

 神楽一紗と桂浦香具耶は、二人きりで、舞っていた。
『ひとき舞』の稽古である。

 とはいえ、『ひとき舞』とは相手の精神を引きこみ、トランス状態へ落としこむ舞全体を指す言葉であって、特定の演目があるわけではない。
 舞踊を志す彼らにとっては、それは落ちつかないことであり――従って二人は、『ひとき舞』を組みこんだ自分たちの舞踊演目を作成することにして……。
 それがようやく、形になってきたのである。

「何ていう名前にするの?」
「『影猫』っていうのを考えてる」
「かげねこ。なるほど、影の、猫ね。妖怪かしら。影にひそむ猫」
「その猫は、相手の目を見つめて操り、闇の世界に引きこんでしまうんだ」
「引きこまれた相手はどうなるの?」
「頭の中を書き換えられて、猫のものになってしまう」
「いいわね」

 この二人はお互いを知り尽くしているので、冗句も間投詞もほとんど出てこない。それをはさんで思考を整理する必要がないからである。

「最近噂になっている、あれは、あなた?」
「半分は。それを利用して楽しませてもらってる」
「じゃあ、あと半分は? 噂の元になったものがあったの? それとも錯覚で?」
「浦河先輩と――日高先輩だよ」
「日高先輩? あの人が?」
「浦河先輩が、静内先輩を催眠で猫にしてみたら面白かったので、同じことを日高先輩にやってみたそうなんだ」
「あの人に……」
「ところが、元気よく駆け回った静内先輩と違って、日高先輩は、それこそ影のようにするりと、部屋を抜け出して外へ出てしまった」
「大騒ぎじゃない? いえ、なっていないということは、はっきりとは見つからなかったのね」
「そう。日高先輩は、運動もできるし、頭だってすごくいい。だから人目につくところに出るような真似はせず、影から影へ――全裸のまま、這い回った」
「裸で」
「ああ」
「想像してる?」
「もちろん。綺麗だったろうね」
「それは同意よ。見たかったわ。でもあんたは後でおしおきね」
「イメージを塗りつぶしてくれよ、香具耶の裸で」
「他の女のことは思い出せないくらい、たっぷりしてあげる」

 二人は視線を合わせ、軽く唇を重ねた。
 でもそれで話がそれることはまったくない。二人にとってこういうじゃれ合い、触れ合いは当たり前のことなのだ。

「――問題は、その際に浦河先輩が、『あなたは淫らな、いやらしい猫です』っていう暗示をかけていたことでね」
「確か、日高先輩も、催眠使えたわよね」
「ああ、あの人だから、技法は完璧に頭に入ってる。経験もけっこう積んでる。図書委員の二年生なんかで時々遊んでるらしい」
「じゃあ、別な意味で大変なことになったんじゃない?」
「そうなんだ」

 運動能力が高く頭がきわめていい、手足が長くしなやかな、影にひそむ、淫らな、猫。

 それが、物陰から、一人でいる女子を襲い――押さえつけ、相手が裸なことに愕然とした心の隙に、暗示を流しこみ、意識を支配する――。

「淫らな猫は、相手を支配して……その後どうしたんだろうというのは、浦河先輩も教えてくれなかったけど。
 それが、『影猫』の噂の元になったんだろうね。捕まえられた相手が、しばらく休むか、おかしなことになって……」
「先生に聞けばわかるんじゃない? 聞き出してみる?」
 もちろん、催眠を使って、という意味だ。
「いや、それより……『猫』が獲物を獲るところを想像すると、ね……」
 意味を察した香具耶が、軽く喉を動かした。
「いやらしい所、硬くなっちゃう?」
 香具耶が、身を寄せて、一紗の股間に手を置いた。
 それは恥じらいもてらいもなく、医師のように、その部分の状態を確認するという以上のものではなかった……のだが。

「……硬い……わね」

 香具耶の手がその上を這い回ると、一紗も香具耶も、その目をたちまち情欲に濁らせて、熱い息をついた。

「正直に言っていい? 私以外のひとで硬くするって、ムカつく」
「ごめん。愛してる」

 そう言って、香具耶の唇にまた軽くキスをすると――。

「はい」

 一紗はいきなり、香具耶の手を上から押さえた。

 ちょうど一紗の股間の中心で、香具耶の手の平に、布地越しの硬くなった肉棒の感覚がはっきり伝わる。

「え……!」
「この手は、もうここから離れない」

 優しく、当然のことを言うように、一紗は香具耶に語りかける。
 言って、軽く力をこめ、押しつけ――その際に一瞬、震えるような動きを示す。
 それら、細かな仕草のひとつひとつにも工夫がこらされており、香具耶の意識は即座に手に集中し、硬直現象が発生する。

「や……待って……!」
「離れない。そして、感触がはっきりわかるよ」

 穏やかな声の中にも暗示がこめられている。『何の』感触かは言っていないが、香具耶はペニスのことだと思いこむ。一度思いこむともうそれ以外のことは考えられない。硬くなっている男のもの。香具耶を何度も何度も、死ぬほど気持ちよくしてくれたもの。これが与えてくれる快感のために生きている、と心から思えるほどに素敵なもの……。

「それを感じていると、全身が熱くなる。手は離れない。熱くなり続ける」
「ん…………!」

 香具耶が悩ましいうめき声を漏らし、体をくねらせた。
 身の内側から、一紗の言葉通り、熱い感覚が湧き上がってくる。全身をとろかせ、息を弾ませ、思考を溶かしてしまう甘い熱だ。手の下にある硬い肉棒、それが入ってきた時のあの快感と同じ、あらゆる思考を溶かしてしまう愉悦の波が全身に広がる。頬がゆるみ、目が霞み、唇はだらしなく半開きになって、今にもよだれがこぼれそう。
 催眠誘導は、どちらも、慣れている。かけるのも、かけられるのも。
 どちらがどちらにかけるのかは、その場の空気や流れ、タイミング次第で決まる。今は一紗がかける時間だった。

「いやらしい気持ちで、頭の中がいっぱい……いやらしいことをされたい。もうそれしか頭にない」

『自分がかけられる方』と認識した香具耶の心に、一紗の暗示が深く入りこんでゆく。
 もちろん一紗も、香具耶が受け入れがたいことは口にしない。催眠というのは万能の支配道具ではない。香具耶を自分の望み通りに反応させるには、的確な言葉を、的確なタイミングで告げなければならない。修練を重ねて会得したそれを、一紗は美麗な唇から流し出す。

「今、手の中にあるものが、さらにくっきり感じられる。……それが、体に、入ってくる……」

 声音、声量、そして間。すべてがかっちりはまり、香具耶の精神は一紗の導くとおりになる。手の中にあるペニスが、体に入ってくる。ペニスが入る場所といえばヴァギナだ、両脚の間の熱い穴。香具耶は暗示にさらにはまって、両脚の間に、手の中のものの侵入を感じる。矛盾はない。手の中のものがおま○こにも入ってくることに何の不思議があるだろう。

「あ…………は…………!」

 熱いものが膣口を割り開き、香具耶の胎内に入りこんできた。
 それは現実のものと何も変わりなかった。いやむしろ現実のペニスよりも香具耶の体を熱く潤わせた。
 香具耶は快感に震え、唇を震わせ、うめき声を漏らす。

「さらに欲しくなる。もっともっと、全身で、これを欲しくなって……」
「う、あ、あ……!」

 一紗の言葉に合わせて、香具耶の体内の熱はさらに大きくなる。
 感覚だけでなく、感情も、言うがままになる。香具耶は言われた通り、もっとチンポ欲しいという気持ちに支配される。

「……そして、指を鳴らすと、体の感覚はそのまま、催眠から覚める!」

 突然、香具耶は素に戻された。
 指が鳴る音が耳を叩くと、途端に、欲情にとろけていた頭がすっきりする。夢から覚めるように、あるいは舞台の通し稽古をいきなり中断させられたように。

「え……?」

 催眠をかけられていることは自覚している。自分が何をされたのかも記憶にある。一紗の意図だけがわからない。
 ――いや、わからなかったのは、覚醒した後の、一呼吸ほどの間だけで……。

「んっ、くっ! ううっ!」

 強く、香具耶はうめいた。
 スカートの中、両脚の間に、熱い感覚がうごめいていた。
『体の感覚はそのまま』なのだ。
 感じさせられ、火照り、より一層の刺激と快感を求めてうずきにうずく体が、そのまま。

「意地悪……!」

 香具耶は、自分とほとんど同じ顔をした相手をにらんだ。
 前は自分と完全に同じだったけれど、このところ少しだけ男っぽく角張ってきた顔が、愉快そうに笑う。

「どうする?」
「…………ほんと、意地悪…………」

 香具耶は涙目になった。
 一紗が何を見たがっているのか、すぐに理解できた。できたからこそ涙目になった。

 香具耶は視線をそらし、羞恥に肌を染めながら、着ているものを脱ぎ始めた。
 何度裸をさらし体を重ねていても、服を一枚はだけるたびに強い羞恥に襲われる。あるいはこれも一紗の催眠によるものかもしれなかったが、それを考えてもどうなるものでもない。
 恥ずかしさに顔を引きつらせつつ、香具耶は下着姿になり、白い脚を開いた。

「は、はやく……しなさいよ……」

 不機嫌そうに唇を引き結び捨て鉢に言ったのは、せめてものプライドだ。
 いかに相手に惚れ、抱かれることを喜び、心の底では完全にひとつのものになっていたとしても、お互いに踏みこんではならない場所、してはならない不作法というものはやはりある。
 下着をつけたままなのも、その一環だった。
 優しく求められれば、全裸になるのもやぶさかではない。下着の中身は、胸も股間も狂おしくうずいている。一紗の熱いものが欲しくて仕方がない。だが、今日のこの催眠で、自分から早々に全てさらけ出して求めるのはしゃくに障った。裸を見たければ自分の手を動かしなさい。香具耶はそう意地を張ったのだった。

 だが、そのプライドを、一紗は容赦なく突き崩しにかかってきた。

「嬉しくなってくるよ。僕にされる全てのことが、嬉しくてたまらなくなる。1……2」

 言われてカウントが始まると、香具耶の精神は即座に変容した。

「あっ……!」

 意地を張っている自分。自分が一紗のせいでそうさせられているということが、喜びに感じられてきた。
 催眠だとわかっている。今日は抵抗したい気分。抗わなくては、と香具耶は意地を張ろうとする。

「3」

 しかし、カウントと共に、心の中が、甘く溶けていく。
 一紗の催眠にこの世の誰よりも深くかかっている香具耶の精神に、暗示は強烈に作用し、わずか3カウントでもう、屈服しかけていた。

「うう……」

 うめきながら、何とか険しい顔を作ろうとするが、じゃれついてくる子猫でも見るような幸せな気持ちが広がり、どうやっても目元に力をこめられない。
 呼吸をひとつ。すると喜びがさらにふくらみ、何もかも喜びになり、表情はゆるみ、体の緊張が失われ……。

「4。ほら、とっても嬉しい」

 一紗の手が頬に来た。
 触れられただけで、香具耶はうっとり笑み崩れ、自分から頬を寄せ、すりつけ始める。

「どうして足を開いているの?」

 訊かれて、あんたのせいでしょうにと香具耶はとっさに考えた。それが喜びに変わった。この格好も一紗のせい。一紗に発情暗示を入れられて、脱いだ。それが嬉しい。一紗の言うとおりになれていることが嬉しくてたまらない。

「もっと嬉しくなる。5」
「あ…………ああ…………!」

 呼吸が荒くなる。舞踊をやる者にとって呼吸の制御はきわめて重要だ。それが、乱れる。乱さずにはいられないほどの喜びが香具耶を包みこむ。

 ほっぺたをつねられた。それが嬉しい。
 唇を端を引っ張られ、鼻をつままれ、変な顔をさせられた。それも嬉しい。

「フゴッ、て鳴いてみて」
「ふごっ」

 鼻を持ち上げられた状態で、豚のように香具耶は濁った声を上げた。
 それもまた、新しい喜びのみなもととなった。
 全身に広がる快感に、香具耶はどうしようもなく身悶える。

「ふふっ……」

 一紗が含み笑いを漏らすと、唇を重ねてきた。

「ふあ…………ああ…………!」

 キスされた途端に、香具耶はイッていた。オーガズムというより、エクスタシーの境地。幸せにすべてがとろけきる。

「るぉく」

 唇を重ねたまま、一紗が喉で言った。腹話術のようなもので、不明瞭だったが、香具耶にははっきり伝わった。
 カウントのせいで、唇を重ねたまま、さらに喜びが増した。一紗の唇が、舌が、伝わる熱が、唾液の味が、何から何まで快感そのものとなる。
 香具耶は何も考えられなくなり、びく、びくと震え……。
 ブラジャーが外された。

「あああ…………あぁぁ……」

 あまりの解放感に、声がだらしなく伸びる。一紗が外してくれた。人生最大の感動が香具耶を包む。ブラジャーを外してくれるなんて! もしここに日記があれば、香具耶は紙面のすべてをそのことで埋め尽くしただろう。一生忘れない喜びを、ブラジャーを外されたことで、香具耶は得ることができたのだった。

 乳首を一紗がいじめ始める。つまみ、つつき、もてあそぶ。
 香具耶は体を痙攣させ、涙を流し始めた。喜びが大きすぎて我慢できない。うめき声が漏れ、涙がさらにあふれる。体の中のいやなものがすべて流れ出ていって、純粋な幸福感だけが後に残る。

「7…………脱がせるよ」

 最後の一枚に、一紗は手をかけてきた。
 自然と香具耶の腰は浮く。
 腰に食いこんでいた、しっとり湿ったそれが脱がされた瞬間、香具耶は生まれていてよかったと心から思った。

「あ……ああ……」

 興奮に盛り上がる陰唇があらわになり、汁に濡れた穴が口を開く。
 体が、自分の意志とは別に、喜びの痙攣を再び始める。指先が震えあごが細かく音を立てる。急上昇する体温、びっしり立つ鳥肌。

「ほら、すごい……8」

 解放感を確定させる言葉に続いたカウントで、香具耶の精神は完全に墜ちた。
 幸福感が香具耶の全身を満たし、一紗の言うとおりにする以外のことはまったく考えられなくなる。

 記憶はすべてそのままある。ついさっきまで、一紗の仕打ちが不作法だと腹を立てていたことも。
 しかし今や、それも喜びを生む要素だ。一紗によって腹立たしく思わされていた、ということも嬉しい。一紗に関わることならすべてが喜び。香具耶は心から一紗に感謝する。自分を腹立たしくさせてくれてありがとう、ありがとう、ありがとうとむせび泣く。

「9」

 カウントを重ねて、一紗は自らも服を脱ぎ、香具耶の両膝を大きく開いた。

「あ、あ…………あ…………!」

 香具耶は一紗の股間に屹立するペニスに見入り、新たな感動の涙を流す。
 これでもまだ、直接の性的快感は来ていないのだ。香具耶の蜜穴はしとどに濡れ、陰唇は盛り上がり、最高潮の興奮を示しているというのに。
 香具耶は、肉体よりも先に精神を犯されつくしていた。
 その肌は紅潮しきって、白い喉が動き、ふとももを震わせながら、自分からも脚を開いて一紗を誘う。

「来て……!」
「ああ、行くよ……」

 先端があてがわれ、灼熱の肉棒が香具耶の中に入りこんできた。

「うあっ!」

 全身が、爆発したようになる。
 心臓が炸裂し息は詰まり、体中に汗が噴き出てくる。
 今度こそ、本物だ。
 膣だけでなく、体全体が強く締まり、一紗のペニスを、愛しい体を、その形を、感触を、熱を、香具耶のすべてで感じ取る。

「ふあああ…………ああああ…………!」

 悶え、うめく口からよだれが垂れた。

 香具耶は至高の状態に入りこみ、快感に意識を埋め尽くされた。
 その胸の中で、心臓が激烈に打っている。
 挿入の快感だけで高鳴っているのではない。
 来る、今カウントが9だから、すぐに、満を持して、最後の、最高の数字が……!
 その予想、その期待が、動悸のもと。
 何度も経験しているから形成されている条件反射。香具耶の全身は期待にしびれつくして、天上界へ入りこむ決定的なその数字を全細胞全神経で待ち望む。

「数が増えると、幸せが増えて…………1から9まで、どんどん上がってきたよね……もっと上がる……さあ、いくよ……」

 香具耶の膣内に入ったまま、一紗が至近距離で暗示をささやき――ゆったりと、香具耶の中を動きながら、ついに……。

「……」

 わざと間を空け、焦らし、香具耶の心臓を限界まで乱打させてから……。

「10」

 獣の息をつく香具耶に、一紗は告げた。





後編も近日公開予定です。
ご期待下さい!
プロフィール

CROSSOVER

Author:CROSSOVER
 18禁ゲーム制作 とりぷる・すれっと/スタッフィングのブログです。
 よろしくお願いいたします。

 http://crossover-game.jp

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